第294章 〜ending〜卒業式〜
その頃、家康はというと……
学園長室にいた。
「記念品って一体何ですか?わざわざ、こんな所に呼び出して……」
不機嫌そうに尋ねれば、信長は苛立った様子で肩眉毛を釣り上げる。
「貴様は三年間、口の利き方だけは学ばんだようだな」
「用事はこれだよ」
佐助はポンッと何処からか書物を取り出して、家康に渡す。
「二人が綴ったノートを元に、書物にしてみたんだ」
きらりと光る眼鏡。
二人の交換思い出ノートをちゃっかりひまりに見せて貰っていた。
「書物に……?」
「俺からの卒業祝いだ。受け取れ」
信長はニヤリと笑うともう用事はないと言うように、手をささっと動かす。家康はその態度にムスッとしながらも、書物をパラパラと読み、最後には一礼して部屋から出て行った。
「満更でもなさそうだな」
「二人の物語ですからね」
佐助は一年前の春を思い出すように、眩しそうに窓の外を見る。
「一つ聞いてもよろしいですか?やはり貴方は……信康くん、彼同様。前世の記憶があるのでは?」
「俺は天罰など下らんもんを受ける気は無い」
それはどう言う意味なのか。
深く考えれば考えるほど、佐助の中で謎は深まるばかりだった。
(やはり、貴方は偉大だ)
それを家康と入れ違いに来て、扉越しに聞いていた信康。はぁー……と息を吐くとノックをせずにそのまま立ち去る。
何故ならそれは佐助と同じ事を尋ねるつもりで訪れていたからだった。