第66章 風待ち月(15)
『姫主様side』
埃っぽい小屋の中。
暗闇に慣れた目。
翡翠の瞳が、
蛍の光のように、輝く。
シーンとした空間。
直接触れた背中から、
家康の鼓動の音だけが……伝わった。
「俺の好きな子は……」
その先を躊躇うように、
家康が瞼をうっすら落とすのを見て、
「べ、別に無理して言わなくて良いんだよ!」
慌てて私は首を振る。
家康にそんな顔して欲しくない。
そう思って毛布ごと包まれた自分の身体を離そうと、動かした時……。
ハラリと毛布が肌蹴た。
膝の上に落ちて、急いで拾おうと手を伸ばすと……。
「俺の好きな子は、蛍みたいに綺麗な子」
え……。
ホタル?
思わず手が止まる。
そして今度は家康の腕が、
毛布越しじゃなくて……。
私の素肌に直接触れた。