第66章 風待ち月(15)
(何で、そんな嘘……っ)
俺は正面に向き直り、
「っ!何で……っ!そんなに、頼りない?何で、俺に言えないの!?」
何で、
俺に守らせてくれないの。
「だって……。家康の好きな人、築城さん何でしょ?ダンス誘われたって……」
嬉しそうに話してたよ。
ぎゅっと、唇を噛み。
「家康の大切な人。……幼馴染の私も仲良くしたいから」
絡まってばっか。
ひまりに、気づいて欲しくて。
意識して欲しくて、わざと言った言葉が……。
本人には届かない。
俺は、後ろから抱き寄せる。
「い、えやす///身体が、あの……っ///」
身をよじるひまりに構わず、華奢な肩に腕を回し、
「好きな子は、築城じゃない。ダンスも誘ってないし」
何でそうなんの。
「え……。でも、築城さん誘われたって。あれ?……ちがうの……?」
何処までバカなんだろう。
こんな目に合わせた奴の話なんか、まだ信じて。
ひまりの背中が、俺の体温を奪い始め。
「俺の好きな子は……」
顔を横に向け見上げた瞳が、
俺の心を
全てを暴いていく。
いつの間にか止んだ雨。
暫くすると、
小屋の窓の外に……。
無数の小さな光が、
乱れながら舞い飛んだ。
姫主様sideつづく