第294章 〜ending〜卒業式〜
ピンポーン。
タイミング良く鳴ったインターホン。
「……お迎えだ。先に行きなさい。父さんは母さんと後で行くから」
名残惜しそうに私を離したお父さん。
(本当にありがとう……)
心の中でもう一度お礼を言うと、玄関に向かって走る。
「おはよう!!」
「……おはよ」
二人で歩く最後の通学路。
ーーもうっ!またそうやって意地悪するんだから!
ーードジなひまりが悪い。
一年生の時は、ほとんど毎日言い合いしながら歩いた。
ーーふふっ。手、あったかい。
ーーほら、危ないからもっとこっちおいで。
二年生の時は幼馴染として途中から恋人同士として歩いて……三年生はほとんど将来の話をした。
二つの影。
それを見ながら、一歩一歩噛み締めて歩く。手を繋ぎながら……自然と口数は減ってゆく。明日から別々の道を行く。
(今日で最後なんだ……)
そう思うと少し……ううん。
とても寂しい。
家康も同じ気持ちなのかな……?
隣を見れば目があって、私の考えていることなんてお見通しってみたいに、家康はコツンとおでこを小突く。
「しんみりするの早すぎ」
「だ、だって……最後だと思うとつい……」
「通学路としては最後だけど……また、違う形で一緒に通れば良い」
将来、一緒に通勤するとか?
サラッとそんなことを言われ……
私は頬に熱が集まるのを感じた。