第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
唇がやっと離れた後。
私達はいつもみたいにおでこをくっつけ合う。そして二人一緒のタイミングで笑顔を見せた。
「………大好き」
「俺も……」
込み上がる嬉しさにもう一度、
目を閉じかけると……
スッって後ろに影が見えて……
ゴンッ!!
「いっ!!」
「貴様、いつまで見せつける気だ?」
「ひまりが消えた後、この世の終わりみたいな顔をしてここに来たのをもう忘れたのか?くっくっくっ」
石碑の前に立っていた織田先生と明智先生が家康の両端に立つ。私は皆んながいたことに気づくと、慌てて家康との間に隙間を作った。
「ここに私が来るって分かってたの?」
「……ひまりならきっとここに来るだろうって、徳川が言ったんだ」
そう答えたのは信康くん。
色んなことを思い出した私は、何て言ったら良いのか分からずにいると……
「……ひまり。色々とごめん」
先に信康くんが謝ってくれた。
「……ううん。私の方こそ……」
気持ちには答えれなかった。それに儀式もできなかった。大事な花ノ天女神社の後継さんなのに良いのかな……と、私はその事だけが気にかかりでそれ以上言葉を繋げないでいると、頭に感じた優しい重み。
「天罰だよ」
「え?天罰……?」
信康くんは苦味を潰した表情で、自分の前世の話をクリスマスの時に家康にしたからって話すと、翠玉と天鏡が今知ったみたいで「あ!」って短い声を上げ驚く。
「あれ程、前世の話は禁止だと!」
「まぁ、良いじゃないか。信康が自分で決めた事なら」
「……そうだった。すっかり忘れてたけどね」
家康は何故か溜息を盛大に吐くと……ぎゅっと私の両手を掴んで……
「絶対、女の子が良い」
「……へ?」
唐突な言葉に思わず間抜けな返事をした私に、家康は真剣な顔つきで一人で納得したように頷く。
「何、気の早いこと言ってんだ?家康?」
「女の子ですか?家康先輩は女の子に生まれ変わりたいのですか?」
三成くんの問いかけに、今度は隣に立っていた政宗が溜息を吐く番。何となく話の流れで分かるだろ?って言われて……私と三成くんは同時に小首を傾げた。