第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
パリッパリッパリッ。
まるで空が落下してくるように……
硝子が粉々になっていくような音が響く中……景色が少しずつ剥がれ落ちていく。
世界が変わったその瞬間。
「……約束したから」
ふわりと広がったぬくもり。
その香りに私の心は安心感も喜びも感じて、大粒の涙を流す。
「い、えやすっ……」
はらり、はらり。
キラキラした煌びやかな欠けらが、天から次々に降り注ぐ。
昼間の景色が夜に変わり……
散りばめられた星空の下で……
カチカチカチカチッ。
胸の前に回された腕。
そこに涙が滑り落ちる。
時計の針は逆戻りをして、一月三十一日の深夜十二時前を指した。
ゆっくりと振り返ろうとした時。
家康は私をグッと自分の胸に押し付けると……
「ひまりの世界はこっち」
強く存在を確かめるように抱き締めた。
「家康……?……夢じゃない?本当に、本当に家康……?」
腕の中で震える声。
「夢なんかじゃないよ。ひまりは鏡の世界に閉じ込められてたんだ」
「鏡の世界に……?」
「消えた後、真実の鏡の中に吸い込まれた」
すると、翠玉と天鏡がすまなさそうに家康の背後に立った。最後の試練だったと、儀式の最後は約束を交わして、永遠の愛を誓うんだって……もし二人の絆が本物ならば約束を必ず守るはずだからと。
「ひまりが約束を守ってくれたから……迎えに行けた。ありがとう」
家康は翡翠色に戻った両目を細め、私の髪に顔を埋めた。
「家康の側にいても良いの……?もう、普通の女の子として側にいれるの……?」
「……当たり前」
頬を包む手があったかくて……
「家康……」
「……もう二度と離さない」
家康の顔がゆっくり近づいてくる。
睫毛が触れそうな距離まで来て……
言葉にならない言葉を探し求めるように、私は家康の唇に唇をつけた。