第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
ありふれたように感じた日常。
でも、全然違う。
何でこんな大事なことに気づかなかったんだろう。
(ここは……どこ……?)
私が過ごしていた世界と違う。
これが神様からの天罰?
私の学園生活が変わったの?
心が広くていつもあったかく包み込んでくれる織田先生がいない。本当は優しいのに揶揄ってばかりいる明智先生もいない。頭をポンポンって叩いてくれるお兄ちゃんみたいな存在の秀吉先輩、美味しい料理を作って励ましてくれる政宗も、天使みたいににっこり微笑む三成くんもいない。
大切な親友のゆっちゃんも。
憧れの副部長も。
そして……
「違うって何が?」
「違うの何もかもが……」
一番大切な人がいない。
「私は……っ!私が好きなのは……っ!」
冷たい風が悲しげに吹き荒れる。
「家康だけなのっ!」
パリンッ!!
その瞬間……
空間に亀裂が入ったように周りの景色が変わる。空の破片が落ちてくるようにはらはらと雪の結晶のような物が……
頭上から崩れ落ちてくる。
(硝子……?)
それに思わず手を伸ばしかけた時。
すぐ後ろで感じた息遣い。
「……迎えにきたよ」
その声に……
すぅーと流れた透明な二粒の水滴が瞬きと一緒にはじき出された。