第66章 風待ち月(15)
(ひまりも怪我してないか、確認しないと)
少し躊躇った後、足元の毛布を捲り視診をする。
スラリと伸びた綺麗な脚。
所々、擦り傷はあるけど痕が残りそうな怪我はなく俺はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、片足首が赤く腫れていることに気付いた俺は、そっと触診すると……。
「……っ」
ひまりの顔が、微かに歪んだ。
冷やす物が無い為、俺は再び包帯を取り出し、しっかりと固定する。
「ん……っ」
意識を取り戻したひまり。
むくりと起き上がり、
「ここ………」
「山小屋。近くにあったから避難した」
「探しに来てくれたの……?」
「……俺のせいだから」
こんな真っ暗な山奥で一人。
どれほど不安だったか、聞かなくてもわかる。その上、足まで捻挫させて。
「ち、がう……っ!家康のせいなんかじゃ……!」
「……見えるから、しっかり毛布巻いてて」
肌蹴た毛布を見て、
咄嗟に顔を横に向ける。
え?と不思議そう声を上げ、ようやく自分が下着しか身につけてないことに気づいたひまり。
慌てた様子で、露わになった胸元まで毛布を持ち上げた。
「大分、身体冷えてたから。……ごめん」
「う、うん///私こそ、ご、ごめんね迷惑かけて」
ひまりは、ぎゅっと毛布を握り締め恥ずかしそうに顔の半分を隠す。
俺は顔を横に向けたまま、雨が小止みになったら戻るからと、ボソッと呟く。
立ち上がり、棚の中に応急箱を戻した。
「築城さんに。……聞いたの?」
か細い声。少し離れ背中を向けて座る俺に、何とかぎりぎり届く。
「……いつから、嫌がらせ受けてたの?」
「……そんなの受けてないよ」
ひまりは、嫌がらせなんて受けてないと、あくまでも言い切る。