第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
好きだった……?
ずっと……?
私のことを……。
「ひまりは俺のことどう思ってるの?」
「え、えっとその……」
直球な言葉に返事が困った私は無意識に左のこめかみに指がいく。まるでいつもそこに何かがあったみたいに自然に髪をくしゃり。
目線は足下にある芝生に。
(……三つ葉………)
霜が降りて元気がない三つ葉のクローバーを見て、私の心臓はドクンッと跳ねる。
ーーうん!絶対!大事にするっ!ありがとう!
(ヘアピン……)
記憶の断片にはまったパズルのピース。
(そう……いつもここにヘアピンが付いてて……)
誰に貰った?
「ひまりの答えを聞かせて」
答え……?
ーー間違いなのは……っ、ま、違ってるのは……っ…。
また、はまるパズルのピース。
(ここで……悲しいこともあって……)
誰と?何があったの……?
震える指先。
私は思わず凍えるように自分の体を抱きしめる。ガクガクと膝が震えだす。
風が運んできたのは冬の香り。
でも頭の中で記憶が逆再生されていくみたいに……
秋……
ーー……貴方が好き。
私はそう……
そう翡翠の瞳を見ながら……。
「ちが……う……違う……」
「ひまり?」
違う。何もかも違う。
私の大好物は目玉焼きじゃなくて……担任の先生だって、保健室の先生だって……友達も……。
そして隣にいつも居てくれた人がいない。
「ごめんなさ……いっ。私、私……」
ジャリッと音を鳴らして数歩後ろに下がる。