第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
いつもの見慣れた通学路。
なのに何故か景色の中に何かが足りない気がして……
私は地面の影に視線を移す。
一人ぼっちの影。
悲しそうにゆらゆら揺れてまるで誰かを探しているみたい。
すると後ろからバイクの音がして立ち止まった。
無意識に上げかけた腕。青色の鮮やかなバイクは颯爽と横を素通り。
「え?私なんで手なんか振ろうと……」
自分でも自分の行動が不思議。
手をじっーと見て、そっと握りしめるとまた私は歩き出す。
校門について、登校する学生に混じる。
ポンッ!!
「おはよう!ひまり!」
「おはよう!ゆっちゃ……」
肩を叩かれて振り返る。
「ゆっちゃ?何、朝から寝ぼけてるの?」
「また、夜遅くまで本でも読んでたんでしょ?」
クスクス顔を見合わせて笑う友達二人。
「ねぇ?何か朝から不思議なこといっぱいで……私、どっか変なのかな?」
「どっからどう見ても普通の女の子だけど!」
《ドクンッ!》
「そうそう!今日もいつもの美少女ひまり!ほら、教室急ごう!!」
(普通の女の子……)
何故かその言葉が妙に引っかかって……二人に背中を押されながら教室に着くまでの間、私は一言も話さなかった。
騒つく教室。
始まった朝のホームルーム。
教卓に立った担任の先生。
(担任の先生……だよね……?)
少し小太りの眼鏡をかけた担任の先生が出欠を取る姿をただぼっーと見ている内に、ふと急に気になった窓側の席。
(あっ……)
ばちっと目が合ったクラスメイト。バスケ部のエースで、高身長。女子に密かに人気のある男の子だった。
お、は、よ。
《ドクンッ!》
口パクでそう挨拶して、
爽やかに翡翠色の瞳を細めた男の子。
何だろう……
(胸が苦しい……)
どうしたんだろう、本当に。