第293章 あなたに何度でも〜エピローグ〜
pipipi……
目覚まし時計のアラーム音。
私はもぞもぞと布団から手を出す。
(もう朝……?)
カーテンの隙間から注ぐ和やかな朝の光に包まれる。部屋を舞う埃が朝日に照らされ光っている中、私はまだ目が完全に覚めなくて……
(あと、もう少しだけ……)
微睡みながらまたつい暖かい布団の中に戻ろうとした時。
コトンッ。
動いた拍子にベットから何か落ちた。
四角いピンク色の箱。
「ん〜……何だろう……?」
ごそごそとベットから起き上がって、床に転がったそれに手を伸ばす。
♩♩♬〜…………
「オルゴール……?」
《ドクンッ》
指先で触れた瞬間。
胸が締め付けられたように苦しくなって、拾いかけた手を慌てて引っ込める。
(何これ……っ……)
パジャマの胸元をくしゃりと握り締めれば、遅刻するわよー!って、下から聞こえてきたお母さんの声。
私は慌てて制服に着替えようと、とりあえずオルゴールを机の上に置くと……
「あれ?机の上って……何にも無かった?」
違和感を感じた殺風景な机の上。
もっと何かが置いてあったような気がして、私は小首を傾げると時計の針を見て大急ぎで制服を手に取った。
「はい。お母さん特性の目玉焼き」
「目玉焼き……」
「どうしたの?ひまりの大好物でしょ?」
私の大好物……?
「ひまり。お茶を入れてくれないか?」
「え?コーヒーじゃなくて?」
「どうした?朝から寝ぼけているのか?父さんはいつもお茶じゃないか」
お茶……?
次から次に疑問が浮かんで、その正体が何か分かる前に沈んでいく。
「今日の魚座の運勢は……」
自分の星座に反応して、思わずテレビに視線を向ける。
恋愛運ばっちり。
運命の人は翡翠色の瞳。
ラッキースポットは裏庭!
運命の人は翡翠色の瞳……?
裏庭って学校の?
そんなことを考えながら朝ご飯を食べ終わり、お弁当を受け取ると……
鏡の前でチェック。
いつものリップに、いつものトリートーメントを付けた私。
何故かその姿に違和感を持ちながらも……
「行ってきまーす!」
元気よく玄関を飛び出した。