第292章 あなたに何度でも(12)
溶けそうな肌を手で撫で回して、
俺は順番に唇を寄せてゆく。
頬、耳朶、首筋、鎖骨、胸元……
少しずつ赤く染まって肌に俺は夢中になる。
久々だからか、恥ずかしそうにぎゅっと目を瞑り、顔をそらす横顔が本当に可愛くて思わず初めて抱いた日を思い出す。
触れるのを躊躇いながらも、
本能に身を任せたあの日のことを。
「家康の手。震えてる……」
「……壊しそうで怖いんだ」
自分でも自覚があった震えた手。
契りを結ばないと決めたのは自分。それでも何処かで理性を失ってひまりの全部を奪ってしまいそうになる。
大きな瞳に映る俺。
情けないぐらいの表情をしてる。
「……家康になら壊されても良いよ」
家康になら……
まるでそう願っているように囁くひまり。
潤んだ瞳が俺を見上げ、
甘い言葉が胸を擽る。
「壊して欲しいの……」
ぎゅっと後頭部に回された腕。
ひまりの不安がそこから伝わってくる。俺は少しでも安心するように背中に腕を回すと、ひまりの左胸を愛撫。
「んっ……あ、っ……」
「ここに綺麗な花が咲いてる」
ひまりの心みたいに綺麗な花。
優しさも、強さもあるように凜として儚げで……
真っ赤に染まった美しい花。
(綺麗だ……)
それが鏡越しじゃなくても左目で見えて……俺は愛でるように舌を這わす。
今にも消えそうなぐらい綺麗で……
梳かすように長い髪に指を絡ませれば、腰元までしかなかった髪がいつのまにか床まで伸びていた。
時間がない。
そう知らせるように満月の灯りが乱れてゆく、ひまりを照らす。