第291章 あなたに何度でも(11)
暗闇の中。
音を頼りにオルゴールを手探りで探す。
♩♩♬……
私にとって大切な物。
(ううん、二人にとって……)
♩♩♬……♩♩……
一つだったメロディ。
それが途中から重なって……
やっと見つけたオルゴール。
それに向かって伸ばした手。
それまでも重なる。
ハッとして、その手を見つめていると……
「………………ひまり」
ずっと聞きたかった声。
やっとその声が耳に聞こえて……
「い……えやす?」
私は時間をかけて、
ゆっくりと顔を上げた。
すると……
「……ただいま」
「っく…………」
最初にぶつかった視線。
赤い目と翡翠の目。
その目どうしたの……?
そう聞きたいのに言葉が出てこない。
代わりに出てくるのは涙だけ。
「家康っ!い……えや……っ……」
「会いたかった……ひまりっ」
背中に回された腕が夢なんかじゃないって、教えてくれる。
「ぁあっぁあっ……」
「泣かせてばっかりでごめんっ」
とうとう感極まって声を上げて泣きじゃり出した私。家康はそんな私の後頭部を自分の胸元に運ぶと、その上にコツンと頭を乗せる。
家康は何にも悪くないよ……
そう言いたいのに。
「ひっ、く……ぁあっ……」
胸の中で言葉がつっかえて、声をしゃくりあげるのが精一杯で。沢山あった聞きたいこと。それが頭の中でぐちゃぐちゃになって……
「……これ」
シャランッ。
家康は私との間に空間を作ると、そこに鈴のついた剣を差し出した。