第289章 あなたに何度でも(9)
深い眠り……
ひまりは沼に落ちたように意識が吸い込まれてゆく。
そして目を開ければ………
雲の上かと錯覚するぐらい柔らかい上に横たわっていた。
(ここは一体……)
「罰ならどんな罰でも私が受けます!!だから、どうか命は奪わないで下さい!!」
耳に届いたのは悲痛の叫び声。
悲しみと焦りがその声からは物語っていた。ひまりは体を半分起こすと、声が聞こえてきた方向へと視線を動かす。
「人間との交わりは罪深い。ましてや、お前は天界の姫の身」
「例えどんな罰でも受けます!どうか、お願いします!!」
(あれは天女と……神……?)
金色の長い髪、金色の瞳、顔は前髪で隠れ見えなかったがひまりはその神々しい立ち姿を見て神だと悟ると……
(もしかして、夢の続き……?)
連日見た不思議な夢の続きではと……体を起こした。
「っく……お、ねがいします。どうか……どうか」
神の前ですがりつく天女。
三日月のシルシが額にはあり、長い羽衣を揺らす。
「しかし、お前に触れた罪は重い。あの者の記憶は消す。良いな」
「はい……」
「お前の罪は時を越え新しい生を宿す。あの者の分の罪は時が来ればわかるであろう」
良いか。この罪は永遠に続く。
我と交わるまで……
例え何度、新しい生を宿してもな……。
「断ち切りたけば、三つの神器を集めろ」
スッと後ろを向いた神。
天女は暫く動かずに泉に映ったある姿を見ていた。
(あれは…………!)
ひまりは泉に近づき、中を覗き込んだ。するとそこには額にびっしりと汗を掻き、苦しげに呼吸を繰り返す家康の姿が。