第287章 あなたに何度でも(7)
竹刀かなんかで訓練するのかと思いきや……シャキンッ。
届いたのは金属が擦れる音。
(まさか刀で!?)
いきなり刃先を目の前に向けられ、背中に冷や汗が伝う。
「どうした?いつもより怖気づいているではないか?」
気迫が漂い、俺は一歩後ずさる。
すると、風を切る音が聞こえ咄嗟に俺は刀を引き抜く。
カキーンッ!!
目前でぶつかり合った刀同士。
「それともまた怪我でも負い、あの女に看病してもらうつもりか?」
「くっ…………!」
「儀式も近いと言うのに……女すら一人前に抱けぬとはな……」
「いちいち干渉しないでくれないっ!……はっ!!」
挑発してるのか織田信長の口角が上がる。一瞬でも油断したら怪我どころじゃ済まない。不思議なのは刀なんて使うの初めてな割に俺の体はまるでこの感覚を知っているように、動くこと。
カキーンッ!!ガッ!
「はっ!!」
「調子に乗りおって……」
ガッ!
押されていた刀をグッと押し返して、間合いを取った。ひしひしと感じるすごい気迫。
何度も刀を合わせ、額に汗が伝う。
(強い………隙なんて全然ない。防ぐので精一杯だ)
これが織田信長の強さ。
俺はゴクリと唾を飲み込み、右足を半歩下げ次の攻撃に備える。
真剣な睨み合い。
「そろそろ本気で……」
すると……
緊迫した空気が流れるのを感じた時だ。
「お館様。失礼します。……家康ここにいたか」
背後から聞こえた聞き覚えのある声。
「……秀吉か。何の用だ?」
(秀吉って……まさか豊臣秀吉?)
緊張感が一気に抜け、振り返ればそこには予想通り秀吉先輩とそっくりな姿が。
「今から戦の祈願に神社に行こうと思いまして……家康が来ていると聞きましたので、一緒に連れて行こうかと」
(神社???)
「ふんっ!今日はこれぐらいにしといてやる。……連れていけ」
織田信長は鞘に刀を戻すと背を向け、中に戻っていった。