第286章 あなたに何度でも(6)
でも姿がどこにもない。
(中にいるのかな……?)
境内をウロウロしていると……
「佐助から儀式の話を聞いた。何でも家康から聞いたと……詳しく話せ」
(織田先生の声……)
拝殿の裏手から声が聞こえてきて……私はつい聞き耳を立てる。
「儀式とは俺とひまりが契りを交わすこと。言わば神になる為の筆下ろしとでも言いましょうか……」
(え……?契り……?)
契りってつまり……その意味がわかった私は頭が真っ白になる。
「契りだと?貴様、意味をわかって言っているのか?」
「勿論です。小さい頃からこの右目で徳川と約束を交わすひまりを見てきました。自然と恋心を抱き……もしかしたら、俺と一緒に育ったかもしれない。俺と恋をしたかもしれない……と」
ただ問題は……
「ひまりの同意がないと出来ません。俺は良くても……ひまりが……」
ジャリッ!!
思わず後ずさった時。
「…………聞いていたのか」
織田先生が私に気づいて振り向く。
「契り?何それ……何で……何で私なの……?」
待って……。
頭の整理が追いつかない。
「それが……罰……だからだよ。ひまりが神から下された」
「そんなの知らないよっ!罰なんて……儀式ってその事だったの!?家康はっ、家康はその事を知って………る……の……?」
泣かないって決めたのに。
今にも溢れ出しそうな涙。
「…………」
無言の信康くん。それはきっと肯定を意味していて…………
「なら……なら……家康は私と信康くんが契りを交わす為に儀式に必要な永遠の剣を探しているのっ?」
「徳川には全部話したんだ。儀式をしないとひまりが普通の女の子に戻れないことも……」
「そんなっ…………」
嫌だよ。嫌だよ。
家康以外になんて……
触れて欲しくない。