第286章 あなたに何度でも(6)
「隠してた訳じゃない。ただ徳川と約束したんだ。戻ってくるまでこの話はひまりにしないって……」
信康くんはもうこれ以上隠し事はないって。怒ってくれても良いからって……。
でも私はとても怒る気分なんかにならなくて、涙がこぼれないように唇のを噛みしめるのが精一杯。
すると織田先生が側に寄ってきて……
「戻ってきたら、しかと聞いてやれ」
そっと広い腕に抱き寄せてくれた。
カチカチカチカチ……
時計の音が儚く時を刻んで行く。
京都旅行の夜。
ますます家康がどんな思いで私を抱いたのか分からなくなる。
最後のつもりだったの……?
だからあんなに激しく……。
聞きたくても、聞けない。
ねぇ……。
どんな気持ちで私を抱いたの?
辛かったの?悲しかった?
ねぇ、教えて……。
お願い……。