第285章 あなたに何度でも(5)
(何やって……!)
今度は俺が慌ててそれを引っ込める番。
「…………」
「…………」
流れた束の間の沈黙。
「あ、ありがとうございました///」
俺にオルゴールを返しながら、
真っ赤に染め上がった頬。
「こ、今夜はどうしましょうか?///」
いつ間に取り出したのか胸に抱いていたのは、教科書ぐらいの大きさをした書物。
「…………それ何?」
「えっ///な、何ってその///ご存知なのにわざと言って………」
何故かごにょごにょと口を濁され……
俺は何かの手掛かりになるかもと思い無言で手を伸ばしてパラパラと書物を開けば、そこには性技のありとあらゆる方法が春画と文章で説明されていて……
(なっ!!///)
咄嗟に書物を手から落とす。
わなわなと震える手。
膝の上で拳を作り、少し落ちつかせようとすれば……
「ふふふっ。本当にどうされたんですか?」
栗色の瞳が俺の顔を覗き込む。
人差し指を顎に当て、小首を傾げる仕草がひまりの姿と重なり思わず視線を逸らした俺。今夜はどうしましょうか?の意味がわかると俺は態とらしく咳き込んだ。
「まだ風邪治らないみたいだから……」
適当な言い訳をしてその場を誤魔化す。
「そうみたいですね。ゆっくり休んで下さい。……なら、少しお話をしてもかまいませんか?」
「………別に……良いけど」
「ふふっ。出会った当初は、俺は仲良くするつもりないから言ってらっしゃったのに、こうやってお話出来るようになって嬉しいです」
「………………そうだっけ」
相槌を打つぐらいしか出来ない俺。
それでもひまりと久々に話しているような気がして……俺の表情は自然と緩む。