第284章 あなたに何度でも(4)
洗面台の前で顔をこれでもかってぐらい、鏡に近づける。
月のシルシ。
どうも昼間は消えているみたい。
私は念入りに前髪をチェック。
そして一人で通学路を歩いて、
学校へ向かった。
すると……
「……おはよ。ひまり」
背後から抱きしめられて……
ガタンッ!!
振り返った瞬間、
思わず近くにあった机にぶつかる。
「い、い、い、家康なん……んんっ!?」
「……やっぱりその反応か」
政宗が近寄ってきて私の口を塞ぐ。そして小さな声で家康じゃなくて……「翠玉だ」と、教えてくれた。
「戻ってくるまで化けるつもりらしい」
(翠玉なの???)
私がそう目で問いかければ、翡翠色の両目がそうだよって言っているみたいに動く。
「痴話喧嘩も終わったみたいだな」
「やっぱり二人はこうでなくっちゃね!」
クラスメイトの皆んなは口々にそう言って、何故か拍手喝采。ずっと心配をかけていたんだってこの時に気づいた私は……皆んなを騙しているみたいで少し胸が痛んだ。
「あいつが戻ってくる間だけだ。許してやれ……」
「う、うん。翠……い、家康。ほら、席に着いて」
了解!!スッと離れた体。
私ははぁっーと、息を吐くと席に着く。
「ごめん。驚かせて……翠玉には調子に乗らない様に後できつく言っておくよ」
信康くんは申し訳なさそうに、謝った。私はううん、と言って代わりにお礼を言う。この方が皆んなが変に心配したりしないから、大丈夫だよって。
それに……
窓の外をぼっーとして見つめる翠玉。
その姿は家康そのもので……私は鼻から息を吸って静かに吐いた。
始まったホームルーム。
織田先生は事前に聞いていたのか、特に驚く事もなく出欠を取る。そんな中、聞こえてきたひそひそ声。
「石碑が真っ二つに割れてたらしいぜ」
「この学園のシンボルなのにね」
石碑……
昼休みにでも一度見に行こう……そう決めて私は黒板の方に顔を向けた。