第64章 風待ち月(13)家康様side
真っ先に部屋から飛び出す。
雨が降り始めてから、一時間。
(ひまり!!)
ーーダンスが終わるまで、どっかに行って欲しかっただけでっ!!
俺は、焦る。
(俺が、守んなきゃいけないのに)
ーー懐中電灯を持ってれば、工事中の看板にすぐ気がつくと思ったのよ!
応急用テントの中。
姿を消した懐中電灯。
「ひまり!!!」
工事中の看板を通り越し、奥へと走る。
ーー家康君とダンス踊ってる所なんて、見たくなかったのよ!!
守れなかった。
俺のせい。
ーー幼馴染なんて……っ!そんな……都合い……い…理由……。
気持ちも伝えないまま、
側にずっと置いて……。
(幼馴染を利用してたのは……)
ひまりじゃなくて、
俺の方だ。
『倒木の撤去作業中』
行き止まり。
雨が足跡を消し、
ひまりの行方も消す。
俺は木で身体を支えながら、
道から外れ斜面をズルズルと滑る。
(ヒメボタル………?)
点滅する光。
雨降ってるのに、あり得ない。
(違う……っ!あれは!)
俺は今にも消えそうな光を目指し、
落ちてるのとそう変わらない速度で、
「ひまり!!!」
斜面を駆け下り、
木の枝で、全体重を支え……
必死に手を伸ばした。
蛍みたいに綺麗な、
お姫様を掴まえる為に。