第64章 風待ち月(13)家康様side
雨に濡れ、
ポタポタと
雫を落としながら……。
ドアを開け、ズカズカと中に入る。
さっきまで女の笑い声が響いていた部屋が、一気に静まり返る。俺は気にせず、壁に背中を預け呑気に座る女に近づき……。
「ひまりに、手を出したら……」
容赦しないって。
冷やかに目を細め、
「俺、言ったよね」
見下ろした。
「な、何の話?あの子が何か言ったのかしら?」
流石に俺のドスの効いた声に恐怖心を抱いたらしく、視線を逸らしすっとぼける作戦らしい。
「ひまりが、何処にもいない」
「え……!」
目を見開き、明らかに動揺し始めた築城。暫く間があった後、自分は知らないと首を横に振る。
小刻みに震えた肩。
もう少し、脅したら吐くと思った俺が更に一歩間を詰めた時。
小春川達が事情を聴き終わったのか、部屋に入って来た。
そして俺同様に、詰め寄り……
「保健委員の子は、暗くてわからなかったみたいだけど」
声は、貴方に似てたって言ってた!小春川は、ひまりの携帯も圏外で繋がらないと泣きながら築城の胸倉を揺らし、
「ひまりの居場所教えなさいよ!!あの…こっ…怖がりだし!……ドジだ……し……っ」
「小春川、落ち着け!」
見兼ねた政宗が小春川を引き剥がし、俺らに任せろと言って、後ろに下げる。
「……言って、早く」
「し、しらな………」
「へぇ……。知らないの?もし、ひまりに何かあったら」
あんたに責任なんて、取れないよ?