第282章 あなたに何度でも(2)
不思議た夢を見た。
月夜の綺麗な晩___
ーー家康様……。
暗闇に浮かぶ白い肌に、
俺は腕を伸ばし引き寄せた。
ーー……あんた、何か消えそうで恐いんだけど。
その美しさが、この世の者とは思えなくて……。とっくに心を奪われていた俺は不安になる。
月夜にしか姿を見せず、記憶も無い。
名前も解らない。
それが余計に俺の中の不安を掻き立てた。
サァッ…………。
サァッッ…………。
耳に届いた木枯らしが吹く音。
俺は重い瞼を持ち上げる気にはならずに、その音に耳を寄せた。
そんな中、感じた人の気配。
まるで目線だけで虫でも殺しそうな冷ややかな鋭い視線。
「起きろ」そう言われているような気がして瞼が動く。
頭の半分はまだ温かい泥のような浸かり、意識は虚ろだ。それでもその視線に耐えかねたように、やっと俺は目覚める。
最初に目に入ったのは、見知らぬ天井。
「………目覚めたか」
すぐ近くから聞き覚えのある声が聞こえる。まだぼーっとしていた俺の意識はその声に叩き起こされるように、頭が横に動いた。
ぼんやりとした視界。
月光の光が少しずつ辺りを照らして…………
(なっ!?)
そして座っていたある姿を見て、一気に目が覚めガバッと起き上がる。
「…………織田先生っ!」
「………先生だと?貴様と同盟は組んだ覚えはあるが、師匠になったつもりはない」
訝しげに細められた目。
その言葉に俺はハッとして、辺りを急いで見渡す。
(ここは…………)
状況を思い出そうと頭をフル回転。頭の整理をしようと髪をぐしゃっと握る。
(そうだった。俺はタイムスリップして……)
ワームホールが現れて、確かに俺はひまりの代わりに……。
となると考えられる可能性は一つ。此処は戦国時代……。そしてこの目の前に居るのは……。
「……織田信長」
そうボソッと呟いた時。