第63章 風待ち月(12)
ひまりが登り始めた頃。
テントの下。
各コテージの点呼報告を、
待っていた信長と弓道部員の男子。
「後は、一部屋だけですね」
「まだ来てねえのは……俺らのクラス女子か?」
「……………」
三成と政宗の横で、無言の家康。何故か妙な胸騒ぎがして落ち着かず、ただ静かに報告を待っていた。
その時、弓乃を先頭に数人の女子が傘もささずテントの中に飛び込み、
「ひまりが、まだ部屋に戻ってません!」
その一言で、
家康達の顔が一気に青ざめる。
弓乃はキャンプファイヤーが始める少し前、明智先生に呼ばれ、出て行ったきりだと捲し立てた。
数分後、
見回りを終え、職員用テントに戻ってきた光秀。その話を聞き、訝しげな顔つきで……
「俺は、姫宮を呼びつけた覚えはない」
「だ、だって!他クラスの保健委員の子が来て……っ!」
「小春川、その生徒の所に案内しろ」
弓乃は今にも泣きそうだった。そして先頭をきり、再び雨の中を信長達と走る。
(もしかして、あの女。何か知って……)
家康は、この件に築城が噛んでいる気がしてならなかった。そして弓乃達が確認を取っている間、自分だけ違うコテージへと向かった。