第278章 天邪鬼の愛〜真紅〜(20)
このままじゃだめ。
このままいつまでも、
皆んなに心配かけさせちゃだめ。
そう思ったのに……
「珍しいな。ひまりが一人で昼飯食ってるの。しかもこんな寒空の下で……風邪引くぞ」
「秀吉先輩……」
昼休み一人で体育館裏で昼食を取っていた私の元に秀吉先輩が現れた。
「戦国プリンス様ーっ!」
「確かさっきこの辺りでお見かけしたのにーっ!」
聞こえた女子生徒の声。隣で気まずそうに苦笑いする秀吉先輩を見て私はクスリと笑う。そして数秒後、久々に笑ったこと気付いた私ははぁーっと溜息を吐いて……目を閉じる。
「秀吉先輩は辛い時、どうしますか?」
「……辛い時か。まぁ、足掻くだけ足掻くだろうな」
「足掻くだけ足掻く……?」
「あぁ。お前の場合だと……泣きたかったら思いっきり泣けってことだ」
「それ……前に織田先生にも言われました。笑いたかったら笑え、泣きたい時は泣けって……でも、いつまでも泣いてばかりじゃ……」
冬休み中、家康は秀吉先輩の所にいるっておばちゃんに聞いた。何かあったの?って、連絡を取り合っていないことを凄く心配してくれたけど、私は何でもないってその場を誤魔化した。
「家康。何か言ってましたか?」
「あいつが俺に何か言う性格してると思うか?」
私は首を左右に振る。すると、頭に感じた優しい重み。感じあと、すぐにぽんぽんってされて、秀吉先輩の大きな手のぬくもりが広がると、ぽろりと涙が伝う。
「人は辛い時や悲しい時程、成長する」
「ひ、でよし……先輩。でもっ……」
「泣いて、強くなれ」
そしたら、色々気づくからって。
秀吉先輩は最後にそう言って、校舎の中に戻って行った。