第278章 天邪鬼の愛〜真紅〜(20)
でも次の日の移動教室の時。
「ひまりっ!ひまりっ!」
連日の睡眠不足と栄養不足に体は限界に達していて、倒れてしまう。
「すいません。ご迷惑をかけて……」
ベッドから起き上がり、様子を見にきてくれた明智先生に私は謝った。
「…………心と体は見えない所で繋がっているからな。まずは、心を治療しろ」
「はい……」
心の治療。
そんなのどうしたら…………
放課後、私の足は自然と石碑に向かう。体が凍るぐらい寒い風に吹き付けられて……
(ここで始めて…………)
春の温かい風を感じながら、
家康とキスをしたのが今はずっとずっと前の遠い日のように感じる。
(それから……)
そして、夏を終えたばかりの新学期。
天音ちゃんとキスしているのを見て、凄く辛くて……今みたいに泣いてばかりいた日々。
(でも想いが通じあって……)
紅葉した秋に私達は幼馴染から恋人同士になって、一緒にここで書物を読んで……永遠の愛を誓った。
カチカチカチカチ。
肌身離さずに持っている腕時計が時を刻む。今の時を…………
じわりと浮かぶ涙に素直に答えて、私は咳出すように泣き始めた。
石碑の約束の約に大きく亀裂が入ってるのを見て、今の私の心みたいに思えて、その場に泣き崩れる。
「い、えやすっ……家康っ……」
学校で目も合わせてもらえない。
近づくとすぐにどっかに消えてしまって、話すらできない状況。
もう、どうしていいか分からなかった。