第277章 天邪鬼の愛〜真紅〜(19)
始業式の後___
体育館から教室に戻ったひまりの表情は、やはり曇っていた。冬休み中にひまりから事情を聞いていた弓乃は空席になった家康の席を見て溜息を吐くと、ツンツンと肘で政宗をこつく。
「ねぇ、何か聞いてないの?親友でしょ?」
内緒話をするようにこっそりそう尋ねた弓乃。
「冬休み中、秀吉先輩のところで世話になっているのは聞いたが、それぐらいだ。ったく。あいつ一体何やってんだ」
「もう、あんなひまり見てられないよ……徳川きたらぶっ飛ばしてやる!!」
「……やめとけ。どう考えても何か事情があるとしか思えねえ」
二人はそれよりも少しでもひまりに普通に接して、笑顔を戻そうと話し合った。塞ぎ込んだように俯くひまりを見て、クラスの者達も思い思いに話す。
クリスマス前に流れた噂は本当だったんじゃないか?
ただのいつもの痴話喧嘩じゃないか?
どちらにせよ、学園一羨まれるカップルの二人。自然と噂の注目は集まる。
それは学年を超えて……
「三成くん、何か聞いてない?」
「いえ。私は何も……冬休み中も家康先輩には一度もお会いしていなくて」
噂を聞きつけた副部長が心配そうに「そう……」と呟けば、三成はそっと頬を包んだ。
「時先輩は来週のセンター試験に集中して下さい。また、何か分かりましたら報告いたしますので」
「三成くん……分かったわ」
副部長は頷く。二人のことは気になったが、今は自分の将来を決める大事な時期。クリスマスに三成から貰った参考書を開くと、図書室で二人っきりの勉強会を始めた。