第275章 天邪鬼の愛〜真紅〜(17)
シーツに包まり、
探しに行こうと立ち上がった時。
ベットサイドのテーブルにメモ書きを見つけて……
(え……)
綺麗な字で綴られた文面を見て、衝撃が襲う。
『暫く会えない』
宛名も何にもない、ただ短い一言。
それでもそれは私宛で書いたのは家康だって分かると胸がつぶれそうになって、上手く呼吸が出来なくなる。
「な……んで……」
何で……?心の中で何度も問いかけた。理由なんてどこにも見当たらない。突然すぎて、思考がついていかなくて……
ガタンッ!!
脚に力が入らなくなった私は、サイドテーブルに倒れこむ。
頭の中がしびれて目の前の現実が受け入れられなくて……
「何で……な、んでっ……」
置かれたままの腕時計。
昨日外したままのイヤリング。
その二つだけは仲良く寄り添っているのを、見て視界がぼやけ出す。
暫くって何?
会えないって何?
どうして……昨日、作ったばかりの思い出が一気にセピア色に褪せてゆく。
急いで着替えて部屋を飛び出せば……
「……家康なら早朝に戻った」
織田先生がいて……
「どうしてですかっ!?どうして急にっ!?先生は何かっ……何か知って……くっ…………」
置いてかれた。
悲しみに溢れた喉を振り絞って声をあげたのに、先生の言葉……「早朝に帰った」が後から徐々に何度も再生されて……瞼を焼くような熱い涙が目から流れる。
ホテルの最上階で……
「くっ……な、んでっ……」
泣き崩れそうになると、
先生は私の顔を広い胸に押し付けた。