第275章 天邪鬼の愛〜真紅〜(17)
真っ赤に染まった綺麗な花。
濡れた花びらは、ルージュを塗ったようにつやつやしていた。
夢の中にいる私は躊躇いがちに、
そっとそれに触れる。
すると、満開だった花は精気を抜きとられたように、ぐったりとして花びらが勢いを失った。
まるで生きているよう。
私は怖くなって触れるのをやめると、あることに気づく。周り一帯が鏡の壁になっていて、閉じ込められて一歩も動けない。
そして鏡の向こうには、悲しそうに瞼を伏せた……
(私……?)
違う。髪は私よりずっと長くて、服装は着物を着ていた。
(どうして、泣いているの……)
気になった私が女の人に触れようと、手を伸ばした瞬間。
パリンッ。
鏡が割れ………
女の人はハッと顔を上げる。
それから……
それから……
どうしたんだろう。
そこまでは鮮明に思い出せるのに……
目覚めた私。
なかなか夢と現実の区別がつかなくて、ぼっーと微睡んでいると、肌寒さを感じてシーツを自分の身体に寄せる。
「んっ………」
いつもと違う天井。
いつもと違う朝の香り。
それが鮮明に蘇らせてくれた昨夜の営み。
初めて一緒に迎える朝に、私は寝返りを打つと隣にいる家康にぬくもりを求めた。
(あ、れ……?家康は……?)
その数秒後……
家康がいない事に気付いた私は、シャワーでも浴びに行ったのかと思って、ゆっくりベットから起き上がる。