第62章 風待ち月(11)家康様side
結局、じゃんけんの勝敗は関係なくなり、見つけた奴から申し込めることに変更。俺は必死に場内を走り回る。
一旦、足を止めダンスの輪の中にいないか確認していた時。後ろから嫌気がさす猫撫で声が聞こえ、
「家康君〜。ダンス相手になってぇ」
後方から走ってくる築城。腕をしがみつかれる前に、俺は咄嗟に身体を避け睨みつけた。
「……俺、今あんたに構ってる暇ないんだけど」
「そんなクールな所も素敵だけど、たまには甘々の家康君が見たいわ〜」
「……相手があんたなら、一生無理」
俺が甘やかしたいのは、一人。
ひまりだけ。
「そんなにあの女がいいのかしら」
聞き溢しそうだった呟き。
俺は嫌な予感がして……。
まさか、ひまりに。
「……ひまり見なかった?」
「見てないわ。輪の中で、男子と呑気に踊ってるんじゃない?」
築城は長い髪を自分の手でサッと払い、いかにも興味なさそうに話す。それが逆に引っかかる。
まぁ。その可能性も無くはない。
一理あると思いもう一度、輪の中に視線を向けた時だ。
雨があたり始めたのは。
最初はポツポツと、
数秒後……。
ザァッーと一気に降り注ぐ。
「弓道部の男子はテントに来い!それ以外の者は、コテージに戻り点呼を取れ!」
織田先生はマイクを片手に、咄嗟の判断で指示を出した。