第62章 風待ち月(11)家康様side
キャンプファイアーの火が灯される。
風が全くない所為か、炎は一気に燃え上がらずパチパチッと音を立て、徐々に広がっていく。
そんな中……。
一切、抜け駆けなしという契約。
それを、三成の提案で結んでいた俺達3人。今まさにひまりにダンス相手を申し込む順番を賭けた、じゃんけん大会を始めようとしていた。
「文句は言うなよ」
「……解ってる」
「では、いきましょう」
三成が卑怯な手を使わないよう、至って普通のじゃんけんにする。政宗の掛け声から始まり……
「戦国じゃんけん!」
「引き分けで」
「「「ハッ!!」」」
ひたすら引き分け(あいこ)を繰り返した後、ようやく決着が着いた。
やっと決まったし。
「では、私から♡」
「二番手か」
「……何で、俺が三番」
最悪。
ひまりが二人を断らない限り、順番回ってこないし。
俺が徐ろに溜息を吐くと、突然俺達の所に秀吉先輩が現れて……。
「悪いな。俺が既に一番手で申し込んである」
その瞬間、俺の順番が四番手に降格。
今日の自分の運の無さを恨みたくなる。
(こんな契約放棄して、さっさと申し込んでおけば……)
ダンスのこと、何もひまりは言ってなかった。だから多分、知らなかった筈。
今更しても遅い後悔。
とりあえず、ひまりを探し始めた俺達。けど、一向に姿が見当たらず……。クラスの奴らに聞いても、そう言えば見てないと首を横に振るだけ。
(ったく、何処フラついて……)
ひまりが見つからないまま、最初のダンス曲が軽快に流れ出した。