第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
待つ事、三十分。
出来上がったアルバム写真。
あの二人はあのまま帰ったみたいで姿はどこにもなかった。
「喧嘩別れしちゃったのかな……」
「………………」
しんみりとした声で呟けば、家康はじっーと足元を見ていて……不思議に思った私は顔を覗き込む。
「家康?さっきからどうしたの?ぼっーとするなんて、珍しいね?」
「………別に。それより次。夕方前にはつつじさんに会いに行くんでしょ?思った以上に時間かかったから急がないと、赤い橋。……行けなくなるよ」
ほら……差し出された手。私はしばらくその手を見つめ、ふぅと息を吐き出すと自分の手を絡ませて笑顔に戻る。
修学旅行で作れなかった思い出。
「あ!このリップ入れ可愛い!ゆっちゃんとお揃いで買ったポーチの柄と一緒!」
「なら、お土産。それにしたら?」
「うん!!」
その分、いっぱい作りたかった。お昼は湯葉のランチを食べて、携帯でいっぱい写真も撮って、お店屋さんで皆んなのお土産を買って……気づいたら時間は三時。
すっかり体も冷え切り、私達は手を繋いだままつつじさんの呉服屋さんに向かう。
「こんにちはー!」
前日にお邪魔することは電話で伝えた。元気よく挨拶して店の中に入るとあの時のようにつつじさんとご主人さんは畳の上に座っていて、柔らかい笑顔で出迎えてくれる。
「いらっしゃい」
「あ!お姉ちゃんだ!」
同じように近くで座っていた女の子二人。一人はつつじさんの孫娘の縁(ゆかり)ちゃんで……もう一人は赤い橋で見かけた黄色いランドセルの女の子。
「小牧(こまき)ちゃんだよ!今日、お姉ちゃんとお兄ちゃんがくる事を話したら、会いたいって!」
「こんにちは!」
「こんにちは!はい、これ。お土産だよ」
私は地元で有名なお菓子の箱を渡すと、二人は目を輝かせ、一つの箱を二人で仲良く持っていく。