第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
つづしさんはそれを受け取って、
立ち上がると……
「ささっ。折角だから、奥の座敷で皆んなで頂きましょう」
奥へと案内してくれた。暖かいストーブのついた部屋。いい香りのするお茶を入れて貰い、つつじさんとご主人さんと話し込んでいる家康の近くで、私は縁ちゃんと小牧ちゃんと恋バナに話を咲かせる。
「二人ともいつ告白するの?」
「「ふふふっ!内緒ーっ!」」
二人が好きなのは同じ男の子。それでも二人は仲良しで良きライバルで……私はそんな二人をかつての自分と天音ちゃんを重ね、眩しそうに二人を見つめた。
学校の話だったり、クリスマスプレゼントの話。二人は次から次へと楽しい話をしてくれて、私は時折相槌を打ったり、質問したりして夢中になって聞く。
ぼーんぼーん。
すっかり話し込んでいた私達は、ハッとしてはと時計を見た。
「もうこんな時間っ!」
「……赤い橋は……明日にしようか」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。私達はつつじさん達にお礼を言うと、ちらちらと雪が降り出した空を見上げながら歩き、バスに乗り込んだ。
美しい建造物が冬の冷たい空気の中にそびえ立つ姿はまた格別で……
話したい事が沢山あるのに、自然と口数は減ってゆく。それでも繋いだ手はあったかくて……窓に映り込む姿を見あって、時々微笑みあった。
ホテルに着くと、織田先生がエントランスの柱に背中を預けて立っているのが見えて駆け寄る。
「…………ギリギリだ」
「ごめんなさい!でも、すごく楽しかったです!」
「…………良かったな。夕食は部屋に用意してある。……これがルームキーだ。俺は別の階の部屋にいるからな。……何かあれば訪ねくるがいい」
「はい!」
先生はまだ用事があるみたいで、私達の荷物は既にスタッフさんが部屋に運んでくれてあると教えてくれると、外へと出て行った。