第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
険悪なムードが漂った時。
あの女の子が着替えを終えて部屋から出てくる。すると真っ先に彼氏さんの所に駆け寄って、私と同じようにどうかな?と尋ねていた。
「まぁまぁじゃねえ?もうちと色気出ないのかよ?あそこの彼女さんみたいに?」
「よし君……」
「ほら、さっさと済ませよーぜ。付き合ってやったんだから、昼飯でも奢れよ」
感じの悪い態度。私は一言文句を言おうとして一歩踏み出そうとすれば、放っておくようにって家康に止められる。でもっ!っと何かを発言しようとしたら……
「……自分で気づくしかない」
家康はたった一言そう言って、行くよと私の肩を抱いたまま歩き出す。
入ったスタジオ。壁一枚で区切られていて、私達は入り口から奥のセットに案内される。始まった撮影。
私達は寄り添ってセットの中に座り……
「まずは正面で撮りまーす」
手を挙げて視線はこっちと言うように手をあげるカメラマンの方向を見る。何枚か撮った後、次は見つめ合うように言われ……ちょっと恥ずかしい。ゆっちゃんと政宗は付き合う前に撮影したから、ゆっちゃんきっと凄く緊張したはず。
「何?にやけて」
「へ!?に、にやけてた///」
「思いっきりね」
「こっちのカップルは仲良いわね〜それに比べて……」
ちらりと横を向いたカメラマン。隣はさっきから静かでシャッターの音しか聞こえない。セットの中にいるから様子は分からないけど……あまり良い雰囲気じゃないのはひしひしと伝わってくる。
(大丈夫かな……?)
浮かない表情をしていた女の子の姿を思い出した時だった。
「もう!いいよ!無理して付き合ってくれなくても!!!」
突然聞こえた大声。