第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
赤い暖簾がかかったこじんまりとした店。中に入ると和服に身を包んだ若いスタッフさんが声を掛けてくれる。
「カップルプランをお願いします。予約とかしてないんですけど、大丈夫ですか?」
「はい。暫くお待ち頂ければ、ご案内させて頂きますよ?」
私は特約チケットを見せて、待ち時間も少ないと聞きホッとする。それから名前を記入したり、スタッフさんに撮影の方法を簡単に説明して貰った後、家康と一緒に案内された椅子に腰掛けて待つ。
「どんな衣装にしようかなぁ〜」
「撮影って事は、カメラマンが撮るんだよね?」
「そうだよ!さっきスタッフさんが言ってたけど、飛び込みだから隣同士で別のカップルさんと撮影するんだって!」
わくわくしながら待つこと、十五分。
私達は着替えをする為、別々の部屋に案内される。すると、中にはもう一人同じ歳ぐらいの女の子がいて、私は目が合うと軽い会釈をした。
「ここからお好きな色打掛を選んで下さい」
(迷うなぁ〜どれにしよう?)
色とりどりの華やかな色打掛が何種類かハンガーに掛けられていて、私は一枚一枚吟味して選んでゆく。
(よし!これにしよう!)
私が選んだのは真紅色の色打掛にピンク色の掛下。
「きっとお似合いですよ」
まずはメイクから。みるみる自分が自分じゃないみたいに変身してゆく。太いアイラインに濃いアイシャドー、薄っすら白いファンデ。
最後に伊達兵庫髷……後頭部に左右2つに分かれた髷を、耳のように上にピンと伸ばした髪型のカツラを被れば、鏡の中の私は別人に。