第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
車で走ること約二時間。
窓から見えたのは京都の街並み。
「修学旅行ぶりの京都!楽しみー!」
「……迷子にならないでよ」
「フッ。そう言っている貴様が、迷子になったりしてな」
織田先生の言葉に不機嫌そうに言い返す家康。そんな二人のやりとりを聞いて私はクスクスと笑う。
シャランッ。
笑うたびに揺れるイヤリング。
流れゆく景色を見ながら、私は旅行ガイドブックを取り出すと、行き先を一つ一つ確認。
「まずは、花魁の体験!それから祇園観光に行って、つつじさんに会いにいって〜それからそれから赤い橋に行こうね!」
「…………分かった」
祇園は修学旅行で一緒に回れなかった場所。花魁体験はホテルのスイートルームの特約に付いていて、赤い橋は……家康が告白をしてくれた大切な場所。
辛い思い出もあった修学旅行。
でも、今はこんなにも楽しくてガイドブックをつい何度も見てしまう。
(明日、晴れるかなぁ〜?)
次の日の計画はまだ立ててない。家康がその時に決めたら良いって言ってくれたから、お天気とかの様子を見て決める予定。
「…………門限は七時だ。夕飯はホテルで予約してあるからな。それまでに戻ってこい」
「はいっ!ありがとうございました!」
季節は冬。
外を吹く風は冷たくて寒いけど、弱々しくても柔らかな日差しがあるお陰でほのかにぬくもりがあった。車から降りた私達はさっそくゆっちゃん達も行った花魁体験ができるお店へ向かう。