第272章 天邪鬼の愛〜真紅〜(14)
雪が降り積もった十二月下旬。
朝から私はご機嫌だった。
シャッって音を立てながら、ピンクのカーテンを開いて、ベットメイク。
「くまたんおはよう!」
クマの縫いぐるみに挨拶して、その隣に寄り添うように座ったサンタの縫いぐるみ。スタンプラリーの景品で貰った物。赤い帽子が特徴的な可愛いサンタの頭をぽんぽんってすると、ルンルン気分で着替えを済ませる。
それからリビングに向かって、コーヒーを飲みながら新聞を読むお父さんに挨拶。
「……ご機嫌だな。気をつけて行ってくるんだぞ」
「はーい!お父さんありがとう!」
私がご機嫌な理由。それは、今日と明日と一泊二日の京都旅行に行くから。冬休み中に行こうねって、ずっと約束してた。急遽決まったのは、お父さんが旅行に行くのに出した条件が……
ピンポーン。
鳴ったインターホン。
私は軽い足取りで玄関に向かう。ガチャリと扉を開けば、そこにはムスッとした家康と……
「……あまり浮かれるな。雪で滑れば、旅行どころではなくなる」
「はーい!気をつけまーす!」
織田先生。
そう出された条件が織田先生も同伴ってこと。同伴って言ってもほとんど移動だけで、織田先生は個人的な用事も兼ねているみたい。
旅行バックを抱えていると、それをヒョイッと家康が奪う。
「…………ほんと。あんまり浮かれると三成みたいにすっ転ぶよ」
「もう!家康までっ。お父さん!お母さんいってきまーす!」
いってらっしゃい!そう二人は玄関先で見送ってくれる。お父さんは織田先生に頭を下げて、よろしくお願いしますと更に深々と下げた。
こうして始まった一泊二日の京都旅行。お気に入りのリップ、三つ葉のヘヤピン、ピンキーリング、そしてイヤリング。家康に貰った大切な物ばかりを身につけた私は、元気よく織田先生の車に乗り込んだ。