第269章 天邪鬼の愛〜真紅〜(11)家康様side
ゴンドラから降りると、
流れたパレード終了の園内放送。
ひまりはキョロキョロと辺りを見回すと、ある背中を見つけ駆け寄ってゆく。
「良かった!信康くんてっきり帰っちゃったかと思った!」
「……帰ろうか悩んだけど、折角だし。待ってたよ」
いつもならさっさと姿を消す癖に、今日に限って神木は待っていて、ひまりは大きく頭を下げて何度も謝っていた。俺はその後ろからギロリと睨み、「帰れよ」と圧をかけるが、神木は反対に三成みたいににこりと笑い……
「今日は思い出作りだからね。付きあわせて貰うよ」
「あと一時間ぐらいしかないけど、めい一杯遊んで行こう!!」
「…………ほんと邪魔」
俺がそうボソッと呟けば、もう!と怒り出すひまり。さっきここに来た経緯の話を聞いたけど、偶然とは思えない。たまたま一人でクリスマスツリーを見に来たらひまりと会うとか……偶然を装った計画的な犯行にしか思えない。
俺がいつまでもブスッとしていると、腕にひまりの腕が回る。
「なら、メリーゴランド乗ってくれる?信康くんは乗ってくれたよ?」
「……無理」
「折角だから、まだ行ってないミラーハウスに行かないか?」
「ミラーハウスに……」
何かイベントをしているらしいと話す神木にどこか戸惑ったようなひまりの声。回した俺の腕にぎゅっとしがみ付くと、静かに頷いた。
「ただいま、クリスマス限定でスタンプラリーをしています!」
サンタコスチュームに身を包んだスタッフ。ハロウィンイベントの時のように、スタンプカードを差し出す。
「一人一枚みたいだね」
「携帯使えないから、しっかり捕まってなよ」
コクリと動いたひまりの首。