第269章 天邪鬼の愛〜真紅〜(11)家康様side
伏せ目がちに閉じられた瞳。
ゴトンゴトン。
音を立てながら登ってゆくゴンドラ。
重ねた唇は、想いが暴走するぐらい熱くて……
くちゅり。
「んっ…………」
止まることを知らない。
ちょうどゴンドラがてっぺんに来ていたらしく、数秒後には下降し始めた。でもそんなのお構いなし。
トンッ。
ひまりをシートの上に座らせ、キスは続く。角度を変えるときに薄っすら目を開ければ、目の前で揺れるイヤリング。
いつでも自分の存在を感じてもらいたい。その思いを込めて贈った。
カチカチと刻み出した腕時計。
唇を離せば、額と額はくっつき合う。
「家康と同じ時間を刻みたい。そう思って贈ったの」
照れ臭そうに俯いて、時計の文字盤に触れたひまり。
「これからも、ずっと一緒にいたいから」
今度は真っ直ぐに。
俺の心臓を貫くぐらい可愛く笑う。
「これからも一緒にいよう。来年も再来年もずっとこうして……」
揺れるゴンドラの所為にして、再び奪った唇。胸を熱く焦がすような時間。
それからは残りの半分。
約束通り、観覧車から景色を眺めた。俺が事故に遭いかけて、代わりに携帯が破損した事を伝えると……
「なら、また今度。イルカのストラップ買いに行こうね!」
また増える約束。携帯壊れててメモする事も出来ずに、俺は静かに頷く。
どうか忘れませんように。
約束が……
ひまりの笑顔が……
「今度こそ、約束だよ!」
この先も守れますように。
カチカチと針の音を鳴らす文字盤にそっと触れ、願をかけた。