第269章 天邪鬼の愛〜真紅〜(11)家康様side
俺とひまりが寄り添いながら歩き、その後ろを神木が歩く。順調にスタンプを二つ集め……
残り一つ。
「あれ?信康くんがいない……」
「どっかではぐれたんじゃない?別に一緒じゃなくても、ゴールすればいい訳だし」
俺としては絶好のチャンス。
ひまりと二人っきりのが好都合。
「それにしても、さっきからずっとしがみ付いてるけど、怖いの?」
「何か鏡の中をじっと見てると、吸い込まれそうな気がして……」
お化け屋敷でもないのに、さっきからひまりは俺の腕に巻きついて殆ど前を見ていない。吸い込まれる?俺がそう尋ねると、「うまく言えないんだけど……」ひまりはそうぽつりと声を落とす。
この手のアトラクションは、小さい頃から苦手じゃなかったはず。
(そう言えば、前に来た時も……)
こんな状態だったことを思い出した時。
道が二手に分かれた。
『サンタのスタンプがこの先の何処かにあります。ここからは一人で進んで下さい』
そう鏡に貼られているのを見つける。別に指示通りにする必要はないが、時間を短縮しようとすれば、別々に行く方が効率は良い。
「どうする?一緒に行って虱潰しに探すか……」
「ううん。平気。私、こっちに行くから。家康はあっちを探して来て」
ひまりは早くこの中から出たいのか、早口にそう言うとそっと俺の腕から離れた。
二手に分かれた道。
けれど俺が行った先には……
「…………話がある」
サンタのスタンプはなく、
代わりに神木が立っていた。