第267章 天邪鬼の愛〜真紅〜(9)
大観覧車の前に着くと……
「特別乗車券をお持ちの方は、こちらへお越しください!順番にご案内させて頂きます!」
サンタコスチュームを着たスタッフさんが、スピーカーを片手に呼びかけていた。私達は指示通り列に並び、順番を待つ。
夜空に登って行く観覧車。薄っすら積もった雪と、仲良く手を繋いだ恋人たちを乗せて、高く高く登って行く。
(どんどん登ってく……上から見たらどんな光景に見えるんだろう……)
きっと綺麗なんだろうなぁ……。
そんな光景を家康と見たら……
ーーねぇ!見て見てっ!すっごい綺麗だよ。
ーー……はしゃぎ過ぎ。あんまり窓に近づくと落ちるよ。
(凄く楽しかっただろうなぁ……)
かじかんだ指先。
両手を擦り合わせて息を吹きかけようとしたら、冷たかった右手だけがあったかくて、そこで初めて信康くんと手を繋いでる事に気付いた。動揺した私は、パッと乱れた髪を耳にかける仕草をして、手を離す。
「……嫌だった?」
「い、嫌とかじゃなくて!そ、の……恋人同士でもないのに手を繋ぐのはおかしいかな?っと思って……」
「……恋人同士限定の観覧車に乗るのに?」
「え……?恋人同士限定?」
ふと振り返ってゴンドラを見れば、カップル限定と大きく書かれ、中にはハートの風船が付けられていた。
「チケットの裏を見せて。……ほら、ここ。小さい字だけど、恋人同士に限るって書いてある」
「本当っ!ご、ごめんね!全然知らなくてっ!やっぱり普通にパレード見よっ!」
いくら男女組み合わせとは言っても、友達同士なのに恋人なんて嘘つくわけにはいかない。
くるりと反転して……
グイッ!!
慌てて列から出ようとした私の腕を、
信康くんは掴んだ。