第267章 天邪鬼の愛〜真紅〜(9)
パレードの通路になっている前にある芝生。その上に私達は座る。
自動販売機で買った温かい缶のカヘェオレを頬っぺたにあてて、私は冷たくなった頬に暖をとる。ずっとある事を考えていた。
(これ……どうしよう……)
カバンの中から取り出したのは、大観覧車の特別乗車券二枚。ハロウィンイベントの時に貰った景品。
(時間指定になってる……)
裏面に印字された時刻。
それはちょうどパレードの時間と重なる。多分、上空からパレードが眺めるようになっている特別な物。
「どうしたの?」
「うん……これ。無駄になっちゃったなぁ、と思って」
思わず吐いてしまった溜息。今日、本当は一番楽しみにしていた観覧車だった。
ーー凄い〜!クリスマス特別、大観覧車乗車券だって!
ーークリスマスって……今日より、人多そうだし。
人混みが苦手な家康は文句を言いながら、それでも約束してくれた。
ずっと電源を切ったままの携帯電話。電源を付けようか悩んでいると、隣から頬に向かって伸びてきた手。私は反射的にびっくりして肩をビクッと動かせば、信康くんは慌てて手を引っ込めた。
「……ごめん。あんまりにも悲しい顔してるから……」
「う、ううん!こっちこそ……折角のパレード前に落ち込んでごめんね」
事情も聞かないでずっと付き合ってくれた。時々、浮かない顔をすると今みたいに優しく接してくれて……
「観覧車……。行こうよ」
「え?今から?時間ギリギリになっちゃうよ?」
突然、その場に立ち上がった信康くん。
キョトンとする私に手を差し伸べると「早く」と急かした。