第267章 天邪鬼の愛〜真紅〜(9)
楽しみにしていた遊園地。
二人でサンタコスチュームに身を包んで、ジェットコースター乗って、お揃いのものを買って、微笑み合いながらクリスマスツリーを見上げる夢を何度も見た。
なのに……
「あー!楽しかった!信康くん絶叫系乗れるのちょっと意外だったなぁ〜」
「初めて乗ったんだけどね。楽しかったよ」
「え!?初めてだったの!?」
一緒に過ごしているのは違う人。
私はびっくりした目をしていると、信康くんは顔を覗き込むように屈んで「驚きすぎ」とクスリと笑う。
その姿が家康と重なって見えて……
私は「ごめんっ」って謝りながら顔を横向けた。すると信康くんは遊園地自体初めてだからって小さく呟くのが聞こえて……
「初めてなのに、私と一緒でごめんね」
貴重な機会を私に使わせてしまったことが、申し訳なくなってもう一度謝る。
「謝らなくていい。寧ろ、ひまりとこれて嬉しいぐらいだし」
そう話す口調も家康みたい。
「なら、いっぱい乗ろう!初めての思い出づくりいっぱい作ろう!」
私は自然と笑顔になっていた。
それからも休み暇もないぐらい次から次に乗り物に乗って、寒い風も吹き飛ばすぐらい私達は走り回る。
家康だったら絶対に嫌がって乗ってくれないメリーゴランドも乗ってくれた。家康みたいに、疲れたって文句も言わないで付き合ってくれる。
家康……
家康……
頭の中が真っ白になるぐらいはしゃいでも、心の中は時間が経てば経つほど、家康でいっぱいになっていて……
光り輝き出した園内。
パレードもまだ始まっていないのに、幻想的な空間を創り出すイルミネーションに……私の口数はどんどん減ってゆく。