第265章 天邪鬼の愛〜真紅〜(7)
ひまりが着く三十分前___
家康は携帯を片手に時計台のに向かっていた。同様に待ち合わせして、寄り添いながら去って行く恋人たちを横目に聳え立つクリスマスツリーを遠目に見上げ、何度も携帯のカレンダーを開き腕時計で時刻を確認する。
待ち合わせの時計台はすぐそこ。
Pコートのポケットから綺麗にラッピングされたクリスマスプレゼントを取り出しては、口元を緩め、携帯の画面を確認しては溜息を繰り返す。
プレゼントを渡して、やっと本当のことを話せる。家康はその事で頭がいっぱいだったがメールの返信はない。昨日から何度も電話をかけていたがひまりは出ず、望みを託すように今朝、一通のメールを送ったのだ。
(早く着きすぎたか……)
そして目に入ったのはコーヒーショップ。横断歩道の反対側にその店はあった。
しかし……
「子供が飛び出したぞっ!」
「危ないっ!!!!」
スローモションにかかったような光景。小さな女の子が抱いていたクマの縫いぐるみを落として、横断歩道の中に戻る。
咄嗟に動いた足。
「きゃっーーーー!!!」
キキキキッーー!!!!
辺りに響いたブレーキ音。
ガシャンッ!!!!!
そして何かを車が踏みつける音。
暫くして鳴り響いたサイレンの音。
人々の騒めき声。
(ひまり…………)
横断歩道に転がる小さな箱。
赤い包装紙がくしゃりと皺になり、緑色のリボンは半分程、解けかかっていた。