第264章 天邪鬼の愛〜真紅〜(6)
駅前の本屋。
祝日の今日。客足が伸びていて、外から見る限り店内は人で溢れかえっていた。そんな中で意外な二人組の後ろ姿を見つけて、一瞬中に入るのに戸惑う。けど、先に向こうに見つかって渋々、中に入る。
「何でこんな所に、政宗と三成がいるワケ?」
開口一番に文句。
「店の材料を買い出ししてたら、たまたま会ってな」
政宗はそう説明して、
材料が入った袋を顔前まで持ち上げた。
「で?何で本屋に……」
「私がお付き合いをお願いしたのです。時先輩のクリスマスプレゼントに悩んでいまして」
「まさか……参考書でもプレゼントする気?」
「はい。来月のセンター試験にお役に立てればと……この過去問などどうでしょうか?」
「…………」
「そんなあからさまに嫌な顔するなって。良いじゃねーか。三成らしくてよ」
政宗に肩を叩かれ、そこで全力で嫌な顔をしていた自分に気づく。俺は仕方なく……
「…………それにしとけば。割と分かりやすくて、人気あるヤツだし」
そう答えた。
「だってよ?ちゃんとラッピングぐらいはして貰って来いよ」
はい!にっこり満面の笑顔を浮かべて、店内奥の会計に向かう三成。俺ははぁー……っと盛大な溜息を吐いて、自分の目当ての参考書を探す。
「弓乃が騒いでたぞ。お前が浮気してるって噂が流れてんだって?」
「…………してない」
そこで初めて噂話について知る。それを聞いて後をつけたのかと、やっと小春川の言動が繋がり、それと同時にひまりも同じように誤解してるのかと思ったら、遣る瀬無い気持ちになった。