第263章 天邪鬼の愛〜真紅〜(5)
バイトの時間は午前十時から休憩を挟んで午後四時。祝日とあって、ホール仕事は大忙し。
「すいませーん。水のおかわり下さい」
「はーい。今、行きまーす」
オーダーを取りに行ったり、食事を運んだり、席を案内してお会計まで。ホール仕事は沢山。あっという間に時間は過ぎて、時計を見れば午後三時を針はさしていた。
ランチタイムを過ぎた今、今度はティータイムのお客さんに入れ替わり、あと残り一時間、気合いを入れて頑張ろうと思った時……
「二名様、お願いしまーす!」
「ゆっちゃん!副部長!」
店内に入ってきた二人のお客さん。ゆっちゃんは私の姿を見て「よっ!」って感じで片手を上げて、近寄ってくる。どうやら副部長と二人で買い物した帰りにお茶をしに来てくれたみたい。
「後、一時間で上がりなんだよね?」
「うん!今日で最後だから挨拶だけして、上がる予定だよ」
「確か、今日。プレゼント、買いに行くんでしょ?」
「はい。取り置きして貰ってるから、帰りに取りに寄ろうかと思ってて……」
家康のこと副部長が知っているのかわからなくて、チラリとゆっちゃんに投げかけた視線。すると軽く首を横に振るのが見えて、私はホッと息を吐く。副部長にまで心配を掛けたくない。
「なら、ここで待っててあげるからさっ!」
「そうね。一時間なんてお喋りしてたらあっという間だしね。なら私は……アップルティーとこのケーキセットにしようかしら?」
「私はカフェオレとこのケーキセットね!」
「はい、畏まりました。では暫くお待ちくださいね?」
にっこり笑って私はオーダーを取ると、二人に水を渡して厨房へ向かった。