第263章 天邪鬼の愛〜真紅〜(5)
そもそも探してどうなるのかさえ、誰にも分からない。
「やはり、信康に聞くのが一番手取りばやいのでは?」
「……………」
秀吉の言葉に信長は険しい表情を見せる。確かに、三つの神器の一つである『真実の鏡』は、信康の神社に祀られている代物。詳しい話を知っている可能性は大だ。
でなくとも、信康が何かを知っているのはほぼ間違いないと信長は踏んでいた。現に書物は信康の手にあり、色々と異変が起きだしたのは信康が転校してきてからである。
「……大人しく口を割るとは思えん」
「俺も同意見です。現に俺たちが嗅ぎ回っているのに気づいているのにも関わらず、平然としているのが気になります」
「では、引き続き調査を続けます」
光秀と秀吉は一礼して扉の方へと向かう。しかし、秀吉はふと足を止め振り返った。
「……そう言えば、ここ数日。ひまりと家康が口を利いてないようですが……」
「……ふんっ。どうせ些細なことで言い合いでもしたのであろう」
「くくくっ。もうすぐクリスマスだと言うのにな」
噂を少しは耳にしていた信長と光秀。いつもの事だとさも気にしていない様子。
しかしこの喧嘩がキッカケで……
後にこの件に関して進展を呼ぶとはまだ誰も思っていなかった。
少しずつ解明されてゆく謎。
ーー何度でもあなたに恋をする。
一体、睦月の終わりに何が起こるのか。