第60章 風待ち月(9)
野外活動定番のカレー作りが始まり、私は政宗の包丁捌きを間近で見ていた。料理の苦手なゆっちゃんは、団扇を片手に火の番。家康と私はサラダ担当。
「凄い!もう、いつでもお嫁にいけるね!」
政宗は野菜を素早く包丁で、トントンと一定のリズムを刻み、大きさもちゃんと均等に切っていく。
「お前。男にそれはねえだろ?」
「ふふっ!私のお嫁さんになって欲しいくらい!」
「お前の所なら、嫁に行ってもいいかもな」
冗談を言い合いながら調理を進め、20分後。カレーも完成間近に近づく。お腹も減ったし。早く食べたい。
家康にドレッシング何にしようか?と相談していると、飯ごう炊飯出来上がったよー!と、ゆっちゃんの声が聞こえた。
「うわぁ!良い感じだね!」
「何たって、私が火の番してたからね!」
「……団扇で扇いでただけだし」
家康の一言に眉を釣り上げたゆっちゃん。団扇を凄い速さで仰ぎ、家康に向かって灰をかぶせる。
「ケホッ!ちょ!何やってんの!?」
それを隣で見ていた私はクスクス笑いながら、鼻をクンクン動かす。
(早く、食べたいなぁ)
ツヤツヤのお米。
カレーの良い香り。
すっかり、嫌がらせがあったことすら忘れかけていた私。
楽しくて、美味しい料理でお腹も一杯で、いっぱい笑った。