第259章 天邪鬼の愛〜真紅〜(1)
バイト終了後、私は着替えを済まして、タイムカードを切り、スタッフや店長に挨拶をして外に出る。そして帰り道に通った、ジュエリーショップの前である人影を見つけ、私は近寄った。
「織田先生!お買い物ですか?」
「ひまりか。少し、用事があってな。お前はバイトの帰りか?」
「はい!!」
私は元気よく返事。戦国学園はアルバイト禁止ではなかったが、帰りが遅くなる日もある為、顧問であり担任である先生にはちゃんと話していた。勿論、家康達には内緒にして貰っている。
「ついでだ。送ってやる」
まだそんなに遅い時間じゃない。私はその申し出に遠慮して顔の前で手をパタパタ振るけれど、先生はちょうど今から帰るところみたいで強引に私の腕を引き、歩き出す。
「では、お言葉に甘えて。お願いします」
駐車場に着くと先生は慣れた動作で助手席のドアを開けてくれて、私が乗り込むのを確かめるとゆっくりと閉めた。
走り出した車。
街のイルミネーションを横目に、運転の迷惑にならないように静かにしていると、先生は信号待ちになったタイミングで口開く。
「……先月の新月の晩。お前は何をしていた?」
「へ?新月の晩ですか??」
どうしてそんなことを聞くんだろう?と、不思議に思いながらも私は記憶を探り、部屋に居た思うと話す。
「…………そうか」
長い間があった後、先生はただ一言そう言った。何でそんな質問をされたのか気になったけど、先生の真剣な横顔を見て何となく聞きづらくて私は口を閉ざしたまま次の言葉を待った。
けれど、次に先生がしたのは他愛のない話。最近、家康とはどうだ?とか。期末の勉強はしてるか?とか。バイトには慣れたのか?とか。そんな質問ばかり。