第259章 天邪鬼の愛〜真紅〜(1)
十二月初旬___
駅前にあるファミリーレストラン店。
制服が可愛いと有名な店で、ほぼホールは若い女性スタッフが多い。
「ありがとうございました〜」
家族連れが多くて、
お店が忙しい休日の今日。
冬季に入り、部活の活動も少なくなった私は、再来週に控えたクリスマスに向けてこっそりとアルバイトをしていた。こっそりって言っても、内緒にしているのは家康にで、ゆっちゃんや副部長に協力して貰って政宗と三成くんにも秘密にして貰ってる。
(あの腕時計素敵だったもんね!頑張らないと!)
先月にオープンした『sengoku〜Second〜』で見つけた腕時計。ちょっと高校生には高価な物。文字盤の中に小さな三日月のムーンフェイスデザインの物。月型のクリア窓からはユラユラと自動巻きの様子を覗けるタイプに一目惚れして……
クリスマスプレゼントとして選んだ。
だから家康にはバレないように、予備校の日や休日にシフトを入れてる。
(家康も最近、用事があるみたいで全然会えてないなぁ……)
ちょっと寂しいけど、朝は一緒に登校して学校でも一緒に居れるから贅沢は言ってられない。来週には付き合って三ヶ月記念日もあって、その日は二人でゆっくり過ごそうって約束してくれた。
だから、頑張らないと!
「店員さんガッツポーズしてるよ〜」
「あら本当。きっと気合いを入れてるのよ」
(は、恥ずかしいっ///)
近くにいたある席から聞こえてきた会話。それに穴があったら入りたいぐらい恥ずかしくなって、私はパタパタと銀のトレイで顔を仰げば……
「あのお姉ちゃん!真っ赤〜!トナカイさんの鼻みたい!」
お店に流れているクリスマスの定番ソングに合わせて、男の子が歌い出す。前の席に座っていたお母さんらしき人にもクスクスと笑われてしまい、とうとう私は銀のトレイで顔全体を隠した。