第259章 天邪鬼の愛〜真紅〜(1)
『真紅(しんく)』とは、深みのある真っ赤な紅色。
古来より人々を魅了した色であるが、そんな真紅にぴったりなイベントがやってくる。二人の運命を変えるのは約束を交わしたクリスマス。
クリスマスと言えば恋人同士になった二人にとっては一大イベント。
「……ありがとうございました」
「やっぱり、若い子は良いわ。来週もぜひお願いね」
真紅に染まった赤い唇。玄関先に立つ大人の女性に、軽く会釈した家康。マフラーを首に巻いて住宅街を歩く。
「いらっしゃいませーっ!」
そして可愛らしい雑貨が飾られた店内に響いたのは、ひまりの明るい声。
「君、可愛いね〜。携帯の番号教えてよ」
ペコリと頭を下げ、断りを入れつつも愛想良く対応。銀色のトレイを片手に厨房へと戻り、忙しく動き待っていた。
付き合ってもうすぐ三ヶ月。
その後には待ちに待ったクリスマス。
遊園地デートを約束した二人に待ち構えているのは……どんな一夜だろうか。
寒い冬。
真っ白な雪のように溶け合いながら……二人は真紅のように思い出を赤く染める。